喫茶マンスペース

今日も特になにも起きず。だがそれで良い

スタバに鎮座する学生の本性を見た

今や自他ともに認める喫茶店ジャンキーである私だが、前までは喫茶店での過ごし方がいまいち分からなかった。

 

特に学生時代。勉強はしたくないし、特に本も読みたくない、となるとスマホSNSやゲームをやるほか道が残されていない。ゆえに飽きてすぐ帰るという具合だった。

 

そして、数ある喫茶店の中でも特に過ごし方が分からなかったのが、スタバこと「スターバックス」である。ご存じの通り、スターバックスは緑色の背景に謎の宇宙人のような、ムンクの叫びのようなオリジナルキャラクターが書かれた看板が印象的な、意識の高い若者をターゲットとした喫茶店である。

 

私はスタバのコーヒーは好きである。ただ、この研ぎ澄まされた空間ではいったい何をするのが適切なのか、それが分からなかった。漫画を読むのは少々場違い。パソコンを開いたら最後。プログラミングのひとつでも完了させなければ、店から出る事さえ許されない。そんな気がしていた。

 

そして、とある日。引き続き苦手意識をもちながらも、軽くコーヒーでも飲もうと思い、スタバに入店した。席に座ると、隣の席で何やらスポーツマンっぽい学生の兄ちゃんがノートに文字を書いている。「文武両道とはこのことか」と思い関心していた。

 

さすがスタバである。勉学はもちろん、肉体的にも健康な方々が集まっている。スタバのこの素晴らしい空間の形成には、お客さん一人ひとりも寄与していることを痛感した。同時にますます自分の居場所がなくなっていくような感覚であった。

 

そして私は「このスポーツ学生はどのような勉強をしているのだろう」と気になり、悪いとは分かりつつもノートを覗いた。そこに書かれていた内容が以下である。

 

  1. ジャブ右
  2. ジャブ左
  3. アッパー
  4. ストレート

 

このような組み合わせが、10個は書かれていただろう。実に熱心である。やはり、どんなスポーツでも緻密な計算や地道な振り返り・反省が欠かせない。この学生は、身体を動かすことだけでは不十分であることを理解しているがために、このような攻撃パターンをあらかじめ頭で考え、練習でそれを実行しようとしている。実に熱心である、そう思った。

 

ごく平凡なスポーツ学生であれば、このような努力はしないだろう。多くの学生は、部活の時間内だけ頑張るものだ。だが、このスタバに鎮座するスポーツ学生はまったく違う。実に素晴らしい、そう思った。

 

そして、それと同時に「スタバってこんな感じで良いの?」と思った。

 

従来の私のイメージであれば、この学生は微分積分を軽々と行い、表記されているカフェラテの値段を暇つぶしがてら素因数分解していなければならない。そして、ジャブ、アッパー、ストレートの組み合わせが何パターンあるかを数学的に解決しているはずだった。

 

スポーツ学生の表情を見る。間違いなく、いま脳内で戦っている。筆が走る。勝利の方程式が見えたのだろう。

 

  1. ジャブ右
  2. ジャブ左
  3. ストレート

 

スポーツ学生の表情を見る。2戦目が始まったようだ。筆の動きが鈍い。苦戦している。息を大きく吸い、眉間にシワを寄せる。筆を机に置き、両ヒジを机についてゆっくり息を吐く。八方ふさがりのようだ。

 

 

この学生は実に努力家である。私も見習わなければならない。人目を気にしてスタバで何もできない人間よりもよっぽど素晴らしい。

 

だが、これ以上このスポーツ学生の動向を伺うことは出来なかった。ジロジロ見ていたということがキッカケでモメる可能性がある。数多の攻撃パターンを持っていることは知っている。

 

もちろん私は格闘技未経験である。経験者であるこの学生が勝つ可能性が高い。さらに私は腹筋も10回が限界である。学生のジャブ右でふらつくだろう。おまけに腕立て伏せも10回が限界である。繰り出したジャブ右で己の腕を痛めるだろう。

 

 

というわけで、この学生の本性を暴露するのは、これくらいにしておいてやろう。